監修医からのメッセージ
渡辺 弘之先生
東京ベイ・浦安市川医療センター センター長
心臓は全身に血液とともに酸素を供給するポンプとして、私たちが起きているときも寝ている間も休まず懸命に動いています。そこに起こる異常はすべて心臓病ですが、高齢化が進む日本では、特に心臓弁膜症は増え続けています。重症になると突然死のリスクも上がる危険な病気ではありますが、初期段階では、動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状が徐々に進行するため自覚しにくく、また加齢によるものと混同されやすいため、診断や治療を受けていない患者さんが多くいらっしゃるのではないかと思います。
一方で、心臓弁膜症を甘く考えてはいけませんが、過度に悲観する必要もありません。正しく診断され的確に治療されれば、治すことのできる病気だからです。体に異変を感じる方は、どうか一人で悩まずに、循環器科もしくは心臓血管外科の医師にご相談ください。
田端 実先生
順天堂大学 心臓血管外科 主任教授
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 循環器センター外科/特任部長
心臓弁膜症が重症になると、心臓弁を修復する治療が必要になります。近年、医療技術の進歩によって、治療方法の選択肢が増え、それぞれの治療の質も向上しています。外科手術では、胸骨を切らない低侵襲心臓手術(MICS, ミックス)が普及し、また開胸せずにカテーテルを使って弁を治す治療も急速に普及してきています。
選択肢が広がったことで、より多くの患者さんに治療の道が開かれています。ご高齢の方でも心臓弁膜症を治癒し、正常な生活を取り戻せる可能性が十分あります。また、治療の低侵襲化で入院期間や社会復帰までの時間が短くなっています。ただし、どのような治療にも必ずリスクや欠点、弱点があります。また、最適な治療方法やタイミングは個々の患者さんによって異なります。心臓弁膜症と診断された方は、これまでに治療が難しいと言われた方でもあっても、ぜひ心臓弁膜症の専門家に相談してください。治療の選択肢が広がって専門家であってもすべての治療に詳しくなることは簡単ではありません。時には2名以上の医師の意見を聞くことも重要です。自分にとって本当に最適な治療方法を見つけるためにセカンドオピニオンを求めるのもよいでしょう。